読書漂流

面白かった本、役に立った本の読書記録・紹介です。

「日本文明と近代西洋」川勝平太 NHK出版 1991

静岡県知事の川勝平太早稲田大学教授時代に執筆した本。

本書は二部構成となっている。第一部では、従来の鎖国論に異議を唱えつつ、近代西洋と鎖国日本が達成した近代文明の歴史像について論じている。特に近代の産業の発展を支えた木綿の生産と流通に着目することで、開国後の日本が、非西洋国でありながら、近代化に成功した理由を明らかにしようと試みている。

第二部では、今西錦司の自然学や梅棹忠夫の生態史観、中尾佐助照葉樹林文化論などが紹介され、これら今西グループの文化文明論を引継ぎ、発展させていく姿勢を明確に示している。

 

 

「出発点 1979~1996」宮崎駿 徳間書店 1996

宮崎駿の随筆や企画書、対談等を寄せ集めた本であり、『もののけ姫』(1997)を制作している頃に出版された。日本社会論や教育論、アニメーション論、手塚治虫論など、さまざまな論考を楽しむことができる。

本書に掲載されている対談や文章を読むことで、今や世界的に認められるようになった、あの壮大なアニメーションの世界がどのように構築されたのかを垣間見ることができる。

世界観を形成するにあたっては、中尾佐助(植物学者)の照葉樹林文化論や、藤森栄一(考古学者)の縄文農耕論に深く影響を受けたらしい。

『栽培植物と農耕の起源』を手にしたのは、まったくの偶然である。…(中略)…読み進むうちに、ぼくは自分の目が遥かな高みに引き上げられるのを感じた。風が吹き上きぬけていく。国家の枠も、民族の壁も、歴史の重苦しさも足元に遠ざかり、照葉樹林の森の生命のいぶきが、モチや納豆のネバネバ好きの自分に流れ込んでくる。散策するのが好きだった明治神宮の森や、縄文中期に信州では農耕があったという仮説を唱えつづけた藤森栄一への尊敬や、語り部のある母親が、くりかえし聞かせてくれた山梨の山村の日常のことどもが、すべて一本に織りなされて、自分が何者の末裔なのかをおしえてくれたのだった。ぼくに、ものの見方の出発点をこの本は与えてくれた。歴史についても、国土についても、国家についても、以前よりずっとわかるようになった。(P265)

本書を読むと宮崎駿の熱意に感染して気持ちが前向きになってくるので、ものの見方が狭くなってしまいそうな時や落ち込んだ時などに、折に触れて読み返している。

「大乗仏教―ブッダの教えはどこへ向かうのか」佐々木閑 NHK出版新書 2019

大乗仏教について講師と青年の対話形式で解説した書。

釈迦の教えを元にした初期仏教と、大乗仏教とでは、その教えの内容にだいぶ相違がある。なぜ自己救済を目的とする釈迦の教えは、衆生救済を目的とする大乗仏教に変わっていったのか。その歴史的な変遷について学ぶことができる。

また、般若経法華経浄土教華厳経密教禅宗など、大乗仏教の代表的な経典や宗派の教えの内容が、わかりやすく書かれている。

この本に続けて『ゆかいな仏教』 (橋爪大三郎大澤真幸 サンガ新書 2013)を読めば、仏教についてさらに理解を深めることができるのではないかと思う。

 

「火焔土器の国 新潟」新潟県立歴史博物館 新潟日報事業社 2009

 

「なんだ、コレは!」

芸術は爆発だ!」という名言や、大阪の『太陽の塔』で有名な芸術家の岡本太郎は、初めて火焔型土器を見た時、こう叫んだという。

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 火焔型土器は、縄文土器の一種であり、ほとんどの小中学校の歴史教科書や、高校日本史の教科書でその写真が掲載されているので、その形に見覚えのある人も多いだろう。しかし、日本全国でこの型の縄文土器が出土しているわけではない。

火焔型土器は、富山・長野・山形県などでも確認されているが、そのほとんどが新潟県内、特に信濃川の上・中流域(津南町十日町市長岡市)で集中的に出土している。

最初に火焔型土器が出土したのは新潟県長岡市の馬高遺跡であり、1936年に近藤篤三郎氏らの調査によって発見された。この調査により出土した第1号の土器のみを「火焔土器」と呼称し、その後に出土した同型の土器を「火焔土器」と呼ぶ慣習がある。

現物を見たい人は、十日町博物館や、新潟県立歴史博物館に行けば、たくさんの火焔型土器を見学することができる。十日町博物館に展示されている土器の中で、教科書等に掲載されることの多い代表的な火焔型土器(国宝指定番号1)は、「縄文雪炎(じょうもんゆきほむら)」、「火焔型土器No.1」、「ナンバーワン」などの愛称で呼ばれており、とりわけ芸術的な外観を持つ作品となっている。

今から5000年前に、縄文人はどのようなことを頭に思い浮かべながら、このように複雑で美しい文様をもつ火炎土器を制作したのだろうか。本書に掲載されている火焔型土器を見ているだけで、いろいろと想像力を喚起されてしまう。

「24人のビリー・ミリガン」ダニエル・キイス ハヤカワ・ノンフィクション文庫 2015

1977年、オハイオ州で連続レイプ事件の容疑者としてビリー・ミリガンという男が逮捕された。しかし、本人には、罪を犯した記憶がまったくなかった。その後、取り調べや精神鑑定を行ううちに、ビリー・ミリガンの心の中には、24人格が存在しており、犯行はそのうちの1人によるものだったという事実が明らかになる。

まずは、最初の裁判の時点で、ビリー・ミリガンの心の中には次の10人がいることがわかった。

ビリー・ミリガン(26歳):17歳の時にビルの屋上から飛び降り自殺を図る。しかし、飛び降りる直前にレイゲンが彼を止め自殺は失敗し、長い間眠らされる事となった。

アーサー(22歳):上流階級のイギリス人。合理主義者。流暢なアラビア語を読み書き。

レイゲン(23歳):ユーゴスラビア人。空手の達人。アドレナリンを自由に操る。

アレン(18歳):口が達者なので交渉ごとに出てくる。ビリーの母親と親密。

トミー(16歳):電気好きの少年。縄脱けの名人。風景画を描く。

ダニー(14歳):いつも男性に怯えている。静物画を描く。

デイヴィッド(8歳):他の人格の苦痛を吸収する役割。

クリステン(3歳):イギリスの金髪の少女。失読症

クリストファー(10歳):クリステンの兄。コックニー訛り。ハーモニカを吹く。

アダナラ(19歳):黒髪のレズビアン。詩を書く。花屋でアルバイトをした事がある。

これだけでも驚きだが、人格の出現はこの10人だけでは終わらなかった。ビリー・ミリガンがオハイオ州の精神衛生センターに移送され、精神治療を受けるうちに、彼の心の中には、さらに次の14人の人格が潜んでいることが分かったのだ。

フィリップ(20歳):俗悪な言葉を話す乱暴者。

ケヴィン(20歳):犯罪癖をもつ。

ウォルター(22歳):オーストラリア人の猟師。方向感覚がよい。

エイプリル(19歳):ビリーの義父に復讐心をもつ。

サミュエル(18歳):正統派ユダヤ教徒

マーク(16歳):主体性がない。

ティーヴ(21歳):他人の特徴の真似をする。人を嘲る。

リー(20歳):悪ふざけをする。

ジェイスン(13歳):仲間の記憶を引きうけるかわりに自分の記憶を喪失する。

ロバート(17歳):夢想家。

ショーン(4歳):耳が不自由。

マーティン(19歳):ニューヨークっ子。気取った性格。

ティモシー(15歳):同性愛者に迫られて心を閉ざした。

「教師」(26歳):23人の自我を統合しようとしてあらわれた人格

以上のように、裁判や精神療養の過程において、24人の人格が次々と現れて話が展開されるという、驚天動地のノンフィクション。上下2巻本だが、推理小説を読む時のように、あっという間に読み終わってしまった。

 

 

「超効率 勉強法」メンタリストDaiGo Gakken 2019

 著者は、使える勉強法に共通する「たった1つのポイント」は、「アクティブラーニング」であると主張する。

名前が示す通り、積極的(アクティブ)に学習(ラーニング)に取り組んでいく手法のこと。授業を聞きながらノートを取るような受け身の姿勢ではなく、進んで頭を使いながら学ぶ、これがアクティブラーニングの定義です。(P35)

 

 そして、アクティブラーニングを実践するための方法として、「想起」と「再言語化」が紹介されている。

 「想起」とは勉強した内容を思いだすことであり、「再言語化」とは勉強した内容を自分の言葉でわかりやすく言い換えることである。

 「想起」を行うためのテクニックとしては「クイズ化」「分散学習」「チャンク化」という手法が、「再言語化」のテクニックとしては「自己解説」「ティーチング・テクニック」「イメージング」という手法が紹介されている。

 例えば、参考書を毎日少しずつ読んだりして勉強を続けたが、しばらく経つと、ほとんどすべての内容を忘れてしまい、結局身にならなかった、という経験は多くの人が持っているのではないだろうか。アクティブに学習に取り組むことで学習効果が高くなるというのは、説得力がある主張であると思う。 

「私の東大合格作戦」「私の京大合格作戦」「私の早慶大合格作戦」エール出版社

 東京大学京都大学早稲田大学慶応義塾大学に実際に合格した人、10人余りの合格体験記が記載されている本であり、毎年新しい版が出版されている。

 例えば、

・高1から高3にかけて、どのように基本から応用までの学習を進めていったのか。

・苦手科目はどのように克服したのか。

・予備校はどこを活用したのか。

・英単語・英文法・英文解釈・英語長文など各項目について、どの参考書を使用して、どのような順序で学習を進めていったのか。

等々、さまざまな勉強方法、成功体験を知ることができる。

 大学受験の勉強法に関する参考書は多いが、中でも特に役に立つのが、本書であると思う。一人の著者ではなく複数の合格者によって執筆されており、さまざまな学習法を比較したり、合格者の共通点を見つけ出したりすることができるからである。

 私は高校1年の時に本書の存在を知って購入した。そして、各科目について、本書の中で複数の人が共通して使用していた参考書の中から、自分とフィーリングが合うものを選んで購入し、学習した。

 結果的に第1志望校に合格することができたのは、本書を知って読んだことによるところが大きいと考えている。

 ゼロからのスタートの人であっても、本書を数年分購入し、勉強法を自分なりに研究することで、難関大学合格までの道程を描くことができるようになる。